妖怪シリーズ〜シャコ妖怪との水中戦〜
「シャコのパンチはすごいんだよ!
水槽だって壊せるんだから!」
保育園のお友達から聞いた話に、
息子は大興奮。
潜るのが大好きで、お風呂でも潜
る練習をしている息子のために、
水中戦の物語を作りました。
ダンダダンに登場するキャラクタ
ーを思い出しながら話しました。
雨の匂いと、異変の始まり
その日は、朝から雨が降っていて、蒸し暑かった。
通学路に咲く朝顔は雨粒をまとい、校門のそばの紫陽花にはカタツムリがちょこんと乗っている。
「今日も梅雨らしい天気だな……」
そんなことを考えながら、小学校へ向かった。
午前の授業が終わり、昼休みも過ぎ、
風鈴が、チリン……と静かに鳴った、その時——
いきなり教室から人が消え、時間が止まったように静まり返った。
それと同時に——
床から冷たい水が湧き出し、足首まで浸かるほどに!!
「な、なんだこれ……!?」
パパは慌てて周りを見渡した。
窓の外——
そこには、シャコの妖怪がじっとこちらを見つめていた……。
武士の鎧をまとったような巨大なシャコ。
長いヒゲのような触角がゆらりと揺れ、銀色の甲殻に包まれた体は、異様な威圧感を放っている。
ギロリ……
その瞳が、まるで獲物を見つけたかのように光った。
次の瞬間!!!
足首までだった水が、あっという間に膝まで達し——
チャプ…チャプ…
水面に不気味な音が響き始めた。
そして——
ドバァァァァァ!!!
教室全体が一気に海水で満たされた!!!
「うわあぁぁ!!!???」
水の中で必死にもがくパパ。 気がつけば、完全に海の中のような世界になっていた。
しかも……
教室の扉がゆっくりと開く……。
何かが入ってくる!!!
さっきのシャコ妖怪だ!!!
海中の戦い、シャコ妖怪の猛攻
シャコ妖怪がゆっくりと教室の中へと入ってくる。
その鋭い目が、パパをじっと捉えていた。
「フフフ…… ここは我が領域……」
「この海の中では、我が拳は無敵……!」
ドォンッ!!!
シャコ妖怪の拳が一閃!!!
教室の黒板ごと、一撃で粉砕された!!!
「ひぃ!!?」
パパは必死に海の中を泳ぎながら、なんとか攻撃を避ける!!
しかし——
シャコ妖怪の動きが異常に速い!!!
パパの目には見えないほどの速度で、次々と強烈なパンチが繰り出される!!!
バキィィィン!!(机が砕ける!)
ドォン!!(壁が粉々に!)
ガッシャァァン!!!(窓が崩壊!)
「くっ……海の中じゃ……圧倒的に不利だ!!」
パパは必死に泳ぎながら、考えた。
「このままじゃやられる!! でも……やつは”地上では弱い”はず!!」
「……ならば!」
パパは最後の作戦を決行する!!
大逆転
「シャコ妖怪のふいをついて結界を破ろう」
パパは、教室の端にあった非常ベルのスイッチを思いっきり押した!!
「キィィィィィィィン!!!!」
その音と同時に——
一気に、海水が引き始めた!!!
音に驚いたシャコ妖怪の結界が一瞬揺らぐ。
「な、なにィィィィ!!!?」
「海の……中でなければ……!!!」
シャコ妖怪の体は、海水を失ったことで動きが鈍くなり、あの最強のパンチも弱々しくなっている!!
パパは、この一瞬を見逃さなかった。
「……今だ!!!」
パパは近くに落ちていた折れた机の足を手に取り、思いっきり振りかぶる!!!
ガッシャァァン!!!!
「ぐあああああああ!!!」
シャコ妖怪は力を失い、ゆっくりと崩れ落ちた——
「や……やった……!!!」
パパが息を整えたとき、シャコ妖怪の体はスーッと光に包まれ……
やがて、何もなかったかのように、跡形もなく消えてしまった。
教室にかかっていた結界も完全に解除された。
もとの教室へ
キィィィィン……コォン……カァン……コォン……
授業開始のチャイムが鳴る。
「席に着いて。」
先生の声が響く。
ザワザワ……
気がつけば、教室にはいつものクラスメイトたちが座っていた。
誰も、今までの出来事を知らないかのように、普通に午後の授業が始まる。
パパは、ぼんやりと立ち尽くしていた。
パパの服は、びしょ濡れのままだったんだ。
パパ:季節は?
息子:夏
パパ:なんでそう思った?
息子:朝顔、紫陽花!